スーパー銭湯にまつわるショートストーリー集とcolumn移転のお知らせ

今回はちょっとした箸休めとして、ショートストーリー集でお送り致します。関西圏以外の方には驚き笑って頂き、「あるあるやな。」と関西圏の方々には共感して笑って頂ければ幸いです。また、columnページが移転しました。57回以降はこちらからご覧ください。https://www.med-nextstage.co.jp/?author_name=fukushima

#0 スーパー銭湯前の横断歩道にて

以前のコラムで大阪のおばちゃん・Obachanという言葉を弁当Bentoや可愛いKawaiiのように、新たな英語にして世界に広めたいと言っている友人がいるお話をしました。すんごい自立、強くて面白い、情に深く憎めないキャラであるObachan。Obachanが居れば、暗い悩みもぶっ飛びます。 その「大阪のObachan」にまるわるエピソードです。スーパー銭湯前には横断歩道がありました。4人組のおばちゃんが銭湯に向かって歩いる途中銭湯直前の赤信号を示す横断歩道に差し掛かりました。なんと、そのうち1人(Obachan1号とする。)は温泉が待ちきれないのか、車が来てないのもあって赤信号の横断歩道を会話も歩みも止めずに渡ろうとしました。その時です。隣でさっきまでノリノリで相づちを打ってしゃべっていた別のObachan2号が、「渡ったらアカン!!」と彼女の腕を掴み力づくで制止したのです。

それを見ていた私も、「Obachanって交通ルールに厳しいのだな!」とちょっと意外だったのです。

それに驚いたObachan1号は「えっ?!」といかにも制止される合理性、明確な理由が分からない様子で「だって車が来てないもん」と言うまでもなく驚きを隠しきれない様子でした。そこに被せるようにObachan2号が「1人で渡ったらアカン!!赤信号はみんなで渡らなっ。」とドヤ顔でObachan1号の顔をしっかり覗き込んで言いました。

残りのObachansもObachan2号も、「せやで。みんなで渡ったら怖くない赤信号。」と声を合わせて大爆笑。疳高い笑い声を寒い夜に響かせて、歩道を4人で堂々と横断されていきました。そうこうしていると、車が1台遠くから近づいて来ましたが明らかに減速しObachansに気を付けているのが分かりました。

やはり、強い。笑う者が最後は勝つのかと、学ばされました。

#1 まゆみちゃんとママの会話

スーパー銭湯の脱衣所での会話。お風呂から上がった人々は各々、帰宅の支度をしています。私もその群集に紛れて支度をしていると、隣から支度をしながら話す親子の会話が聞こえて来ました。温泉で身体が温まり、この親子の会話で心も温まりました。

小学校2年生位の愛らしい女の子 「ねぇねぇママ、もし願い事が1っこ叶うなら何がいい?何でも叶えてあげるよ」

私 (おっ。よくあるやつ。このお母さんは何て答えるやろう?一般的になら、「有給で1ヶ月休みくれ。」とでも言うかなぁ(笑)。) 後に、しょうもない考えが出てきた自分を悔やむことになります。

お母さんは少し恥ずかしそうに声のトーンを少し下げ、子供の顔をジッと見るのではなく若干斜め下の足下に目線を落としたかもしれませんが、でも確実に本人に伝えるために言いました。 「まゆみちゃんが一生幸せでいること」

それを聞いたまゆみちゃんは、デレデレとした少し照れくさそうな笑顔で、でもちょっと期待外れで面白くないという印象を含ませて、返答しました。 「えー。もうまゆみ一生幸せになったから、じゃぁまゆみはママが一生幸せでいることってお願いしとくわぁー。」

すると今度はお母さんが真剣な眼差しとなりしっかりと子供の顔を見て言いました。 「そんなんに使いなや。もったいないから、自分のためにとっとき。」 そして念押しの「なっ。」と。

こういう分かりやすい会話を普段私達は出来ているでしょうか?

愛しているけど、愛を伝えるのは苦手で出来ない、とか。好きだけと自分のエゴやプライドが優先してしまう、などは現代人からよく見聞きします。もし誰かを好きなら、「好きだと言う誰にでも理解出来る分かりやすい言動」だけでこの世はシンプルで上手くいくはずです。

#2 治ればなんでもいい。-足つぼマッサージで腰痛を治す-

「腰痛持ちなので足裏の腰のツボお願いします。」 「パソコン業務が多いので目のツボを強めにお願いします。」

足のツボ学がもっと発展して、何か特殊な手法で該当するツボを押したら数秒で肩や腰の痛みが緩和したらんなに働く世代の毎日が楽になるだろうか。

それにしても現代人は疲れている。肩こり・腰痛を持って当たり前な現代人。「運動に抱える不快感・痛み」をもはや生活習慣行病に堂々の仲間入りをさせて欲しいと願っています。

一般社団法人日本生活習慣病予防協会HPから抜粋


痛みのある部位を直接もみほぐすマッサージ、患部や関連部に鍼やお灸をすえる鍼灸。はたまた関節が硬いせいで肩凝りや腰痛が出る方は、原因となる関節のためにストレッチショップや整骨院へ。もみ返しが怖いという人は優しいアロマのマッサージショップへ行かれます。足つぼマッサージは店舗にもよりますが、足の裏に各臓器へ関連するツボの位置をしめしたマップがだいたい飾ってあって、そのマップに沿って足の裏に指圧を加えていく方法です。冒頭にあったように、「腰痛持ちなので足裏の腰のツボお願いします。」「パソコン業務が多いので目のツボを強めにお願いします。」というお客からのオーダーに答えていく流れです。私は個人的に単なる足つぼマッサージのファンなだけであって、専門家ではないことをここに明記しておきます。

私がまだ若手整形外科医であった頃、足の裏に大きな釘が刺さってしまった急患が来られて緊急手術を担当することになりました。その釘の先端には不運にも別の金具が付いており、単に引き抜くと深部で大きな外傷を負うことが予想された為、緊急で開放しないといけない外傷でした。さらにその釘はなんと錆びていた、という情報もありました。小さな釘の頭部しか見えていなかった皮膚を大きく切開して深部を洗浄し、他の部位を傷つけることなく釘と付属金属物の抜去に手術は成功しました。手術の最終工程は全て、切開した皮膚をキレイに縫い合わせる閉創を行います。その時に、私はある衝動を抑えられませんでした。

「足つぼってどこにあるんだろ…?」

皮膚を縫うと言っても、皮膚の裏には皮下組織という脂肪などがうっすらとくっついています。私は予てから皮膚の表面に見えない足つぼとはきっと皮膚の裏側に位置しているのだと推測していました(1人のファンとして)。皮下組織と皮膚が一体となった軟部組織をピンセットのような手術器具を使い左手で把持し、右利きの私は右手で医療用の糸が付いた針を皮膚から刺入し、皮下組織を貫通させて一度体外へ針を抜き、糸と通すという処置をします。その時にふとこれまでになかった心配が過ぎりました。

「私が通した針が足つぼを貫通させて傷つけてはいないか?!」

日本国内の医学部では西洋医学を学びます。だから手術という侵襲的な手法も大切な治療法の1つだと習います。しかし、東洋医学では外表からは(少なくとも素人の私には)見えない足ツボを皮膚の外から押して治療を行うというものです。私はまさに手術中に、西洋と東洋文化の狭間に、ある意味ピンチな状況に急遽置かれたのでした。

それまで順調に進んできた執刀医の私の手技が若干遅くなったのを見逃さないのがさすが指導医です。

「お?!どうした?閉創がゆっくりじゃないか?!」

その見透かされた言葉にハッとするも、私の心の中では様々な葛藤がありました。 「日本国内で普通に育った西洋医学出身の先輩医師に、足つぼの懸念を伝えたところで相手にされるのだろうか?!」 「そもそも先輩が足つぼマッサージを受けた事がなければ、話が余計ややこしく可能性がある!」 「ここは黙って閉創を行いさっさと手術を終了させた方が良い!私は今、西洋医学出身の外科医じゃないか。ここで東洋医学の概念を入れてはいけないっ。」

私がとった行動は、テレビでよくリプレイされるスーパースローのようになってしまったけど閉創手技を止めませんでした。左手で持つピンセットを用い皮膚と皮下組織をめくり上げ、右手で針を通すという閉創の手技のプロセスの途中で、皮膚の裏をちらっと見ました。 足つぼマッサージのマップによると恐らく大腸のツボが存在するはずでしたが、肉眼では確認できる足ツボのようなものは目視できませんでした。

その後、先輩医師に「動きがもっと遅なっとるやないか!」と怒られたのは言うまでもありません。

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