真のアスリートと共に、テレビで1分半ほど放映されました。
私が超音波のプローブを設置する前から画面を見つめている朝倉選手
「すごい」のは選手の頑張りです。
明けましておめでとうございます。新春から嬉しいニュースです。
龍谷大学バトミントン部女子ダブルスで活躍する朝倉みなみ選手と私の診察風景とスポーツリハビリテーション中の様子がテレビで放映されました。
といっても、この番組は「学生アスリート」の青春に着目した番組で、私たちはほんのごく一部のちょい役です。
3月まで以下のURLから無料で閲覧できます。
https://vod.bs11.jp/video/kiraboshi/HqoENo/?fbclid=IwAR3OzAEgnis5i0lHALZRpRUoX1IeCE2Nv4al71UDEz6gux5FpXFCWHLkXjg
2020年1月4日放送された番組というのは、BS-11の人気アスリート追跡ドキュメント番組「キラボシ!」新春スペシャルです。私が35:43〜37:23の間、約1分半登場した奇跡がここにあります。
「朝倉選手を支えていたのはダブルスパートナー以外に・・・」というナレーションとともに病院が映りだし、その直後診察風景が流れるという流れです。ちょうど超音波で、一緒に膝蓋腱あたりを見ているところが使われました。
これまでの出会いから治療内容までを二人で思い出して、笑いながら話し合いました。確かに私が提供した特殊な治療や超音波ガイド下最小侵襲治療は人々を支えたかもしれませんが、それ以上にやっぱり朝倉選手がすごいのは、圧倒的に「文武両道」の方だと言えることではないでしょうか。
スポーツリハビリテーションは体だけでなく、心と頭のリハビリも
私も学生時代はそうでしたが、たいていの日本人学生選手は「セルフケアSelf-care」に無頓着な印象を受けます。診察室で「膝が痛い。先生、よろしく。」と痛い足をただ投げ出してまるで魔法の注射かシップなど治療してもらえばすぐに治るのでは?と思い込んでいる選手が意外に少なくないかもしれません。
一方で欧米で診てきたエリート学生アスリートは、「え?どこで勉強してきたの?」と驚かされるほどに得ている情報・医学知識が豊富です。「スカウトが見に来る半年後の大会に照準を合わせている。半年でこの怪我が治る方法を教えてほしい。間に合わせるためにサプリメント服用は有効か?多数ある注射手技の中でドクターが推薦する治療法とその根拠を教えて。」などなど、矢継ぎ早に質問が選手からドクターへ投げかけられました。こちらも「そんなの想定内だぜっ。」とカッコをつけるのに精一杯で、毎日最新論文を読み込んで予習が欠かせないほどでした。
つまり彼らには「自己管理」の精神がしっかり根付いているからこそ、大切な自分の身体を医師であっても丸投げして任せない、という姿勢があるのです。「一緒に治していこう」や「私が頑張るからドクターたち、しっかりサポートしてね!」という具合です。
それが、ここ日本で大和なでしこ版となって再現されたというわけです。コートの外での朝倉選手は少し恥ずかしがりやではありますが、穏やかで非常に落ち着いていて、控えめながらも聞かないといけないことをちゃんと自発的に質問できる方でした。そして、どうやらそれをノートに記録して繰り返し医学的な勉強をしていたようです。私が提供する治療に関する知識だけでなく、理学療法士から習ったトレーニングメニューも書き留めておられました。治療が終了するころにはもうすっかり医大生のように学び終えていて、怪我する前よりも一段と逞しくパワーアップした感じが見受けられました。
要はスポーツリハビリテーションでは、身体のケアだけでなく、心と頭のリハビリも不可欠である事実を真のアスリートは理解しているのです。どういう動きで痛みが出るからどこを鍛えないといけない、などが自然と見えてくるのです。痛みを詳細に観察し考えながら練習します。そして痛みが出るプレイを修正する。修正したプレイ内容で身体に覚えこませ、試合ではその通りに実行する。
もし幼少期から特に考えなくても出来てしまうような感覚優位の優秀なプレイヤーが怪我を負ったときこそ難解です。しっかり身に付いたプレイの癖をいきなり変えろを言われてもすぐに出来るものではありません。身体に負担をかけてしまう動きの癖を取り除くことが最大の目的であるスポーツリハビリテーションは、選手にとって非常に難しい作業かもしれません。
それにしても自分が学生アスリートだった頃と現代は大きく医療事情が異なります。「治癒は非常に難しい」と言われていた慢性の腱障害に対する対処法が確立してきています。医療者も日々Updateし続けなければなりません。なぜなら、医療というものはその時代の文化や人種により異なるし、世界中で日々Updateされるものだからです。医療の基盤となる医学は、人間への愛とか優しい気持ちとか、そんな目に見えないものと共に人間に寄り添って一緒に生きていく学問なんだと思います。
これからも、初心を忘れずに日々精進していきます。2020年はとうとうTOKYOオリンピックの年です。世界のスポーツ医学を見つめたいと思います。
昨年度コラムを読んで頂きお世話になった方々へ旧年度分のお礼を申し上げつつ、新年のご挨拶と代えさせていただきます。
本年度もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
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