The 自分力 to クリエイティブand Happiness

2008年にノーベル物理学賞を受賞した益川敏英教授が2014年に出版された書籍です。書籍の冒頭は「私は理論屋」と始まり、自分の大好きな物理学を追求出来る天職をされているのだと読んでいてワクワクするような内容です。自身の経験を元に編み出した「自分力を向上させる方法」について理路整然と書かれているので論理派の方にお勧めの一冊です。また分かりやすく噛み砕いた言葉で書かれているので論理が得意でない方も読み進めやすいと思います。

たくさんある益川理論の中で今回はある方程式を取り上げます。こちらの過去のコラムでも少し触れていますが、最近よく親御さんから受ける質問、「どうすればうちの子はCreativeクリエイティブ(創造的)になりますか?」に対する1つの回答になるでしょう。

本書の中で筆者はこう言っています。

自分力を高めた先に、創造力Creativityがある → 自分力=個人力+チーム力
そして「自分力」とは、自分の憧れに気づき、その憧れを実現するためにアプローチする力のことです。ここがユニークな点だと思うのですが、達成のために、他人を巻き込んでも良いとも言っています。けして、誰かに迷惑をかけ無理やりだれかに嫌な仕事を押しつけるというような話ではけしてないです。

じゃあ、どうやって?他人を巻き込む?

それは、誰かを魅了し同士を集い、あなたが好きだからこそ、あなたが抱く憧れに賛同するからこそ、人々が引き込まれていく感じです。他人を巻き込んでいく力を「個人力」として1つの技量だとも明記しています。言い換えれば自己効力感のことです。

そしてまるで、桃太郎のように、人生という旅の途中で仲間を増やし、共に進んで行く力をチーム力と言っています。力強く行進する姿がイメージ出来ますが、けしてノーベル物理学賞に至るプロセスだけに必要な現象ではないと思います。

例えば、オーケストラでフルート奏者が自分の音色を最大限に美しく奏で(=個人力)、その後に「美しい音色で世界中の紛争をやめさせたい」という憧れがあったとします。その憧れに同意したピアノ奏者やバイオリン奏者がオーケストラに参加しだします、つまり巻き込まれたのです(=自分力)。演奏の練習を重ね、最終的にはこの世で聞いた事がないようなくらいな美しい演奏が出来たとします(チーム力)。そして、その音色を聞いた人々が「自分はなにを馬鹿なことをやってんだ。」と、武器を降ろしだしたら憧れだったゴール達成です。

それ以降は、例えばオリジナル作曲をしたり、世界中の言語で歌詞を付けたり、今ここにないものが作られていきます(創造力)。何か新しいものを創造する時、個人力が高い人は、個人1人で達成出来ますが、自分力が高い人はチームとして達成する方法もあります。 ノーベル賞を受賞するときに必ず聞くセリフや光景がありますよね。メダルは1つしかもらえないので、代表者であるノーベル賞受賞者の首にかけられますが、その代表者は必ず研究室のメンバーへの謝辞を述べますし、何度も感謝を示します。事実、研究は1人では絶対に出来ません。様々な役割が集まって何年もかけてやっと1つの研究が出来るかできないかです。

でも何かを創るってそういうことですよね。会社を立てる、家庭を作る、今の職場で新しいプロジェクトを立ち上げる、新しいサッカーチームを作る、1人では出来ないことです。参加者1人ひとりに、心から尊敬と感謝を示し協調しなければ達成出来ません。ノーベル賞もけしてゴールではなく途中だということです。きっとノーベル賞より、さらに大きな夢や目標があったと思います。

高見を望み続けるのが人生だということでしょう。その為には自分力の向上が「幸せ」への近道だと思います。

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