ピッツバーグ市(ペンシルベニア州、アメリカ)にいながら、北欧(スウェーデン、フィンランド)のような暮らしをしています
ピッツバーグ市(Pittsburgh)は世界最高峰の医学研究の州と呼ばれるペンシルベニア州の中でもっとも西側の内陸部に位置することから「East End、東の端っこ」というニックネームがあります。アメリカの東海岸地域でもっとも人気の都市ニューヨークと同じ時間帯で時差はありません。ニューヨークまでは車で6時間、飛行機で1時間20分との大都会に近い便利な立地条件から高騰する生活費を避けて、最近都会から移住する人口が増え続けています。全米住みやすい町ランキングで、過去に全米1位や2位になりました。都心部から車で30分も行くと手つかずの大自然があり各種スポーツ競技場、ハイキング、ピクニックにキャンプ、自転車などアウトドアが楽しめます。私が最も好きなトレイルラン(丘の小道で実施するジョギングやランニング)はきれいな木々を見ながら土の上を走るので足も痛くなく、とても気分が良いです。ダウンタウンから15分ほど離れると自然溢れる住宅街あります。川沿いにはリバーサイドビューが望めるアパートがあり、繁華街に徒歩圏内で遊びに行ける事から最近家賃が上がり続けています。移住の若者が増えるとピッツバーグのダウンタウンにはニューヨークのオシャレでかっこいい文化があふれます。年中、海を見ながらTシャツと短パン姿で過ごせるカリフォルニア州などの西海岸に飛行機でいく時間と、ヨーロッパに行くのは大して時間が変わらない事もあって、フランスやイタリアの文化のど・ヨーロッパ文化やスウェーデンでおなじみの北欧文化も充実しています。ピッツバーグの中でストリップ地区(Strip district)はヨーロッパからの輸入商店が建ち並び、様々なものが購入できる楽しい商店街です。ピッツバーグ人の服装はどちらかというと東海岸風でかっちりとしています。ほぼすべてのパーティーには正装のリクエストがあり、正装をしていない人は入店を断られるというレストランも少なくありません。「単なるレストランでの食事」、よりはオシャレをした「特別な食事」を楽しんでもらいたいレストラン側からの計らいでもあります。ビジネス系の方は毎日の出勤にはスーツを着用するのが大多数です。勤勉で忙しい日常に服装や持ち物のオシャレをふんだんに取り込んで楽しくされています。これが言うなれば東海岸スタイルでしょうか。一方の西海岸スタイルの代名詞カリフォルニア州では、よほどの社交の場でない限り正装が求められない事がほとんどです。毎日の通勤にも仕事後にジムや運動に行く運動着を来ている人をとても多く見かけます。太陽の光と海の景色に、自然体の自分をあわせて日常生活を楽しんでいるようでした。
さて、話は戻り「アメリカ東海岸に居ながら北欧のような暮らしをしています」、と言えば憧れがさらに強まるでしょうか?
ニューヨークスタイルの服装で、イケア(IKEA、北欧の家具ブランド)の家具に囲まれた大きな家を想像するでしょうか?これらはもちろん良い側面の1つですが、「北欧のような暮らし」発言には、「冬場の日照時間が著しく短い」という少し皮肉のような意味が含まれています。アメリカ人の友人達が面白いのは、ちょっとした皮肉やイヤミを含める冗談をよく言うからです。例えば、ぎゅうぎゅうに混んだ飛行機のエコノミーシートで、両隣に体格の良い隣人を迎えた時などの状況を「I have a great seat.良い席だな。」と言ったりします。特に意味はないのですが、ネガティブで終わらせないこれが彼らのユーモアセンスかもしれません。言った方も聞いた方も悪い気がしないから不思議です。
今回のちょっとした皮肉の背景としてピッツバーグでは毎年10月頃〜3月頃まである長い冬期があります。4月5月でも粉雪が舞う程度の日は数日あります。夏、秋が終わるとほとんど毎日が曇りで、日光照射時間が11月に入れば急激に落ちて体調を崩す人もいるくらいです。普段なんともない同僚が12月の大雪の日に、「雪、大嫌い。こんな毎日大雪なら死んでやりたいくらい。」と窓から外を見て言ったのには本当にびっくりしました。その後彼は、1月中旬まで帰って来ない旅行休暇を取りました。春に会った時には元の彼に戻っていて安心しました。世界幸福度ランキング(世界ハピネスレポート)で常に上位を独占する北欧であっても、同様の著しく短い冬期の日光照射時間により実はうつ病患者が毎年冬にだけ急増するのです。これを「冬期うつ病」と言います。ピッツバーグ、アメリカ東海岸、北欧では同時期に冬期うつ病が増えるのです。いつもと何も変わらない家庭・生活・職場環境なのに、冬の間だけ急に暗い性格になったり、孤独感、倦怠感が増したりすることがあります。それに付随してアルコールや甘いお菓子の消費量が増えるといった症状がここピッツバーグでも例外ではありません。しかし、寒いのは急に始まった事ではないので寒い地域ならではの対処法がもちろん文化として存在しています。暖房がしっかりきいた家でホームパーティーの開催が増え、皆が集まりお互いをいたわります。夏場に行われたスポーツリーグの武勇伝、旅行、職場であった面白い話、楽しい話で持ちきりです。ホットワインに、甘いケーキやパイ。私はここに、暖かい日本茶と味噌汁、塩辛い漬物を持ち込んでさらに盛り上げました。塩辛い漬物の後の甘いスイーツがさらに格別になったそうです。そして「日本の味噌汁で不健康な食生活を正そう!」と笑い合いました。スイーツを食べた直後に味噌汁と飲むというネタも出ました。ちなみに私はスイーツが嫌いなので全く食べられないのですが、その場にいるだけで心も体も温かくなります。
クリスマスが美しいニューヨークでもクリスマスとお正月の時期には恒例の水道管凍結や、地下鉄の運行停止があります。このように東海岸、北欧では常にライフラインが無事かどうか冬場は特に注意しながら生活をします。仕事でも大失敗、恋人には逃げられた、友達のパーティーには仕事が遅くなって間に合わなかったとても寒い真冬のある夜、熱いシャワーを浴びようとしたら水道管が凍っていてお湯が出ない状況でも皆乗り越えて強く生きて行くのです。冬期うつ病対策、つまり自分自身の心身共の健康維持が毎年必要なんです。「きれいになりたいなら自分を見つめましょう」、程度ではなく死活問題なんです。だって毎年ですから。他にも短い日光照射時間を補う為のビタミンDサプリメントの定期的な摂取や人工的日光である電気照射機材、セロトニン分泌を促す運動や食事習慣など他にも自分を守る手法が取られています。しかし毎年毎冬、自分自身を真剣に見つめ直し本当の幸せを追求する訓練がハピネスランキングで上位に食い込む鍵ではないかと思っています。
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