自己肯定感を下げる「しつけという名の抑圧」にツイストされている

美しい日本人の伝統的習慣がツイストされているかも、そんな気になった久しぶりの日本滞在でした。ツイストTwistingは読んで字のごとく、「捻る」という意味です。英語では「腰を捻る踊り」や、少し比喩的な表現もあって「あの人と話していると、どうも話の内容を本人が有利な結末になるようにツイストされる・・・(嫌だわ)」です。つまり、会話中にあれあれっと思う間に、解釈の方向性をちょっとずつ変えて話の結末を相手の良いように持って行かれてしまう現象を表す英単語の1つです。

「〇〇しないとだめになるよ」、「〇〇しないと幸せになれないよ」

この「〇〇しないと・・・」というフレーズが子供だけでなく大人にも言動範囲に非常に強力に制限をかけている事にお気づきでしょうか? 実はこのフレーズは本来、命の危険をもたらす自然災害に備える為に的確に話し合う為の言葉でした。自然災害大国である島国がここまで発展してきた理由の1つです。

「柱を補強しないと、台風で強い風が来た時に家が耐えられない」→ だから日本伝統の木造建築技術が発展してきました。阪神淡路大震災、東日本大震災では非常に多くの犠牲者を出し今でも心が痛みます。この痛みを原動力に現在復旧活動が必死に継続されています。これらの大震災の様子は世界中で放映され人々の心に突き刺さりました。その当時世界の人の目に映った報道の中に、私たちとは違った視点がありました。それは木造建築物が水害で流されても建物の形を維持し続けられていることです。あるときは家が船のように水の上を流れて家の屋根の上に人々が避難し、生き残った例もたくさんありました。それほどまでも、日本の建築技術が高い事を世界に示したのです。

「食料の備蓄がないと、災害時に困る」→ だから味噌、漬物、備蓄食材の文化・技術が冷蔵庫がない時代からでも発展しました。今では味噌を代表とする発酵食品は健康食材や最高の美容食材として世界から注目を浴びています。また同じく麹菌を発酵させて作るSAKE(日本酒)はワイングラスとジャズで楽しむ新しい文化さえも生まれています。

つまり、「○○しないと・・・」は災害への備え、生き抜く知恵を生み出す時に使われた言葉でした。

しかし、近年では冷蔵庫も各家に一台ある時代です。災害への備えは変わらず必要ですが、それ以外では昔と比べ大きく改善された安全な社会になりました。その点からみても、この言葉は現代社会にフィットしないように思います。

例えば
「良い学校に入らないと、だめな大人になるよ」→ だから、受験勉強に対し体を壊してまでも取り組み続ける学生達。

「良い会社に入らないと、お金がなくて幸せになれないよ」→ お金がないと幸せになれないという誤った方程式。それにより良い会社が絶対という刷り込みによって自分の個性よりは就職試験に合格しやすいようなキャラクターを演じる若者が作られるという結末になりかねません。この「〇〇しないと・・・」は事態や事象、人間以外のものを議論するときに的確に話し合うために使用されてきた言葉で人間には当てはまりません。現代社会においても、抜けのない仕事、常に完璧な生産性などに貢献する思考です。日本人が誇る几帳面な仕事とはこの考えから生まれるのではないでしょうか。しかしそれを人間に当てはめる事によって本来の意味合いがツイストされてしまっています。人間は何をしてもそう簡単にダメになることはありませんし、生きる本来の目的である幸せは、自分の中で感じるものであって条件によって計れるものではありません。人間はそんな弱い生き物ではありません。

さらに最近よく耳にする言葉として以下も挙げられます。
「〇〇しないと怒るよ」、「〇〇しないと罰が当たるよ」

これはPunishmentの文化をさらに強くしてツイストしてしまった発言です。Punishmentは罰則ですが、本来昔は非常に稀にしか存在しなかった悪人が他者を傷つけたり悪事を働いたときに悪人の悪事を止めるべく、また懲らしめる時にやむなく使用してきた文化です。その裁きは毎日簡単に見かけるものではありませんでした。しかし、最近では大人が子供に向かって言う姿を毎日、数分おきに見聞きします。

「部屋を片付けないとママ怒るよ」(もしくはパパ、じいじ、ばあば、など)「ご飯を今すぐ食べないとママ怒るよ」

これでは「怒られる」が全ての行動に対する原動力になった子供に育ってしまいます。怒って子供をコントロールしても、結局本質のところで子供が理解していなければ、「怒られるから〇〇をしない」という思考になってしまいます。例えば、本来であれば、「危ないから道路は飛び出さない。」が「怒られるから道路は飛び出さない。」だったら、怒る人がいなければ飛び出してもいいっていう理屈もでてきてしまいます。これではせっかく大人が伝えたいことが全く伝わりません。ちゃんと理由を納得いくレベルまで落とし込んで伝えないといけないのだと思います。また、時に子供だって頭で分かっていても体が動かず、片付けたく無い時は片付けたくないのです。大人でもよく見かける光景ではないでしょうか? 例えば飲み会や仕事が長くなり夜遅くにクタクタで帰宅します。疲れ切っているので服をリビングに脱ぎ捨て、通勤鞄を玄関に置き去りにしますよね。なら子供だって時に片付けたくない時だってたまにはあるのです。お友達とクタクタになるまで遊んで疲れ切って、夕食後お腹がいっぱいで眠気に襲われています。今は片付ける気分じゃない、という時です。身体的・精神的疲労状態という全く同じ現象ですので、大人にも子供にも許されるべき状況です。疲れていたら寝て休み体力の回復が先決です。また大人がしないこと、出来ない事は子供に押しつけても無理です。お手本さえ見せてくれれば子供だってちゃんと出来ます。

ここで、もし仮に「ママが怒るよ」のフレーズを使う文脈を考えてみます。その場合、怒るのはママです。でもなんで「子供の片付けない」と「ママが怒る」はイコールの関係なのですか? なぜなら怒るのは本人の勝手であって、子供が起こす事象は直接関与しないからです。もしその根底にママの見栄があったとします。例えばお客さんが来る予定などで今すぐ片付けて部屋をきれいにして欲しい、とか、もしくは、ママが散らかった部屋をお客さんに見られたくない、などの気持ちが根底にあったとします。 ここでツイストが見つかりました。これらはママの個人の嗜好であって、決してしつけではありません。しつけとは教育です。個人の嗜好の押しつけとは大きく異なります。本来そうじ・片付けは1日の始まりと言われ、まず最初に子供が受ける伝統的なしつけの一つでした。片付けられる子供はいい大人になる、勉強が出来る、心の感受性が豊かである、などなど様々な言い伝えがあります。片付けが出来ると自分の持ち物量・種類・収納場所を把握し、必要なときにすぐに対処出来ます。例えば、大好きなお友達を自宅に招いた時に、一緒に遊びたいおもちゃをすぐに取り出す事が出来ます。また新しいおもちゃを買って欲しいときに、自分が持っている個数とお友達の玩具所持量を比べて親に購入を求める時にも使えます。

それだけでなく、世界各国で日本の小学生が学校教室を皆で掃除し片付ける姿の動画が放映され世界中から大反響があったほどに尊敬されています。世界中のママが日本流の片付けしつけを真似したい、と言い世界中の多くの小学校が授業終了後のお掃除・片付けの時間を設け始めました。世界の良きお手本です。それがなぜ、きちんと実施されないと「怒られる」になってしまったのでしょうか?

それはPunishmentのツイストでもあります。恐怖や罰則のマイナスの評価で誰かを動かそうとする良くない風習です。大人同士でも日常に溢れてしまったツイスト現象ですが、これは恐怖政治と同じで悪い習慣です。

それでは、子供に片付けてを促したいときはどうしたらいいのでしょうか?

子供は幼稚園に通い始めれば幼稚園の先生から言葉を習い、大人の言っている事くらいはほぼ理解出来ます。それ以上に大人より優れている能力を持っています。言語というツールだけでの理解ではなく、大人の表情やしぐさから全てを敏感に読み取れます。非言語的表現を逃しません。ママの感情もお見通しです。そんな大人より洞察力、読解力、理解力に優れる子供に片付けて頂くには、どうしたら良いのでしょうか?
①普通に、お願いすること。
②普通に、説明すること。

大人同士であった場合、例えば同僚や先輩に「〇〇さん!今すぐこの書類にサインくれないと私怒りますよ!」とは言わないですよね? 声を荒げたり怒鳴ったりはしないはずです。会社内でそんなことをしたらパワーハラスメントになります。さらに日本文化では年齢を重んじますので、年下が年上に怒鳴ったりは絶対にありません。また年上が年下の者に怒鳴ったり命令したりすると年下の人が非常に断りにくい空気が流れます。その代わり、「〇〇さん、お忙しいときに申し訳ありませんが1つお願いがあります。あなたのサインが無いとこのプロジェクトが進められませんので、プロジェクトの進行を止まらせてしまうのは他のプロジェクトメンバーにも負担がかかるので、お手数ですがお急ぎでサインをもらえませんか?」と相手が理解出来るように言うと思います。そして、同僚が「あ、そうとは知りませんでした。はい、今すぐサインを致します。」とすぐに答えてくれると思います。サインをもらったあなたはさらに、「ありがとうございました。」と協力してくれた同僚や先輩に感謝、次の仕事に快適に進むことが出来ます。

それと同じです。だって子供も同じ人間で、あなたが尊敬して敬うべき対象の人だからです。家族ですから若干のひいきが入ってしまっても家庭内くらいは多めにみても良いくらいです。

片付けをする過程で得られる人間力の育成効果、片付けをした後に得られる効果、部屋が片付いて面積が広がった事で別の種類の遊びが出来る可能性、お友達をもっと多数招待出来る期待などを子供に対し言葉だけでなく、非言語つまり表情や仕草にも出して、ゆっくり説明します。なぜなら、さきほどの同僚や先輩と同じで、「ただ知らなかっただけなのです」。お片付けの利点を。なので、知らないでしょうからお伝えしますという姿勢です。それでもダメなら本人が今日は片付ける気分ではないのでしょう。また時間をおいて、もしくは明日話してみます。会社の同僚や先輩でもそうです。今日依頼してみてダメなら時間をおいてから再度メールを送り催促したり、翌日または、別の日に改めたりしますよね。子供にも同じ手が使えます。何やら機嫌が良いときに言ってみたり、ぐっすり眠った翌日の元気な時に声をかけてみたりチャンスはいくらでもあります。

「来客者がくるまでそんな待っている暇がない、あと30分で来る! 早くしてっ!!」、となるかもしれません。しかしそれは少し自己中心的な考えのように思います。あなたが散らかっている部屋を観られて来客者にどう思われるかをあなた自身が気にしています。子供は気にしていませんし問題だとも思っていません。来客者も「子供が居る家庭だから」と大して気にもしていないことでしょう。もし、どうしてもあなたが気になってしょうがないならあなたが片付けましょう。母親が自分自信の問題だと認識してそれを解決する行動をとることで、子供は自然にその姿勢を学びます。もしくは、どうしても自分が気になって気になってしょうがないなら、お客さんにきれいな部屋で気持ちよく過ごして欲しいから片付けを手伝って欲しい旨を伝えたら良いでしょう。ただ忘れてはならないのは、子供は真っ直ぐで純粋で何も着飾らないそのままの自然なママの事が大好きでたまらないのです。例え、部屋が散らかっていたとしても、その愛情に変わりはありません。「ママは今のママで素敵だから、見栄なんて張らなくて良いし、部屋の見栄えとあなたの価値は比例しないのにな。」と思われるのがオチですが、言ってみると意外に「お客さんに気持ちよく過ごして欲しいもんな。」と同意が得られる可能性は大きいと思います。そうやって大人の背中をみて子供は学んでいきます。実際には子供だけではなくあなたの周囲の大人も学べます。自分の子への高い理想像は誰もが抱く気持ちですが、「億万長者になって」といって子供が本当にそうなれば苦労はいりません。まずはなって欲しい理想の大人にまず自分がなってそれの過程と結果を見せる事が一番の近道だと思われます。子供や若い人に「がんばれ」「がんばれ」を言う前に、がんばれ大人!

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