自己主張 V.S. 自己中心的

英会話には「自己主張」が求められるけど、「自己中心的」は世界共通で嫌われる

2017年の夏に、シリコンバレー・ジャパン・ユニバーシティ(サンタクララSanta Clara、カリフォルニア州California)https://www.svju.org/about で講演をさせて頂いた時に使った内容です。ちなみに、シリコンバレー・ジャパン・ユニバーシティは2015年9月に創設され、頭文字をとってSVJUの愛称で呼ばれています。シリコンバレーに日本人向けの大学を設立し、日本人高校生が大学進学先の選択肢の1つとして気軽にアメリカに挑戦出来るようシリコンバレーに大学がありながら日本人向けの大学となっています。もちろん高校生以外でも大学に入り直したい人全てが対象です。シリコンバレー特有の世界最先端のビジネス業界、テクノロジー業界を大学生の段階から融合させる事により日本人の能力を最大限に世界に発信する使命を掲げておられます。そんな中少し寂しい現実ですが、「日本人は英語を話せるけど、英語での会話が不得意である」と多くの英語ネイティブスピーカーから聞きます。要は「話していても面白くない」と言われるのです。日本人の海外永住者、日本人に限らず他国の留学生・渡航者、英語ネイティブスピーカー、多種多様の人種を比較検討しその原因の1つに我々特有の「自己主張と自己中心的の認識の違い」が隠れていると考え、今回のコラムの題材にしました。我々、日本語ネイティブスピーカーにとって自己主張はかなりの難関ではないでしょうか。なぜなら、日本で生活する分には「周囲と合わせる」「同調する」事が美徳とされているからです。これは世界に誇るべき美しい文化・人種特性なのですが、特に複数名で何かを決断する時に「自分の意思や意見を押し殺す」とは異なります。「我を通してわがままな人やって嫌われへんやろうか…」「同調しないから今度から仲間外れにされへんやろうか…」そんな心配がマジョリティと異なる発言をするときに常に付きまといます。本当は大した事ではないのですが。

それでは具体例を挙げて考えてみましょう。例えば複数人での旅行の時、リーダー的存在の一人が「明日はスキー場に行こう!」と言います。自分以外の皆は全員、賛成を示しています。ついその賛成の合唱に乗り遅れた自分に、まるで同意を求めるように皆の目が向きます。皆がエキサイティングしているのも分かるのでとてもじゃないけど、違う意見を言いにくい状況です。ここで、2択があります。①スキーより本当は温泉に行きたい本音を押さえてとりあえずスキー場へ一行と共に行くと賛同するか、②スキーを断り実は温泉に行きたい旨を伝えるか、です。①の場合、ここでディスカッションは終わりです。なぜなら反対意見がないのでこれ以上の検討の必要がないからです。会話を楽しみたかった派としては面白くないです。「じゃあ明日朝7時に集合」で終わりですよね。②の場合は、二つの意見が真っ向勝負です。自己主張という意味で決してここで遠慮はいりません。なぜなら、賛成者の人数に限らずどちらの意見も尊い人間の意見だからです。パウダースノーでのスキーも雪を見ながらの温泉もどちらも格別です。スキー組、温泉組でいかに各々が素敵かを自慢し合っても楽しいです。嫌われるかもしれないという恐怖の前に、純粋にディスカッション(会話)を楽しむのです。スキーと温泉は安全で簡単な例ですが、これが政治や宗教、文化や人種問題、などに及んだ時こそ、自分のこれまでの人生や価値観には存在しなかった異なる意見、考え方を尊重する技量が問われます。単一の民族で平和に暮らす我々には不慣れで当然です。急に対応出来なくて当然です。もし今後は海外へ出て色んな文化に触れたいのなら、急にはマイドセットは出来ないので普段から自分の価値観外のものを理解しようとする練習が必要です。それが全く価値観の異なる外国人と英語で真っ向から会話やディスカッションを楽しむ最初の1歩だからです。②を選んだとします。スキーが苦手である事、以前スキー事故により骨折を経験しトラウマにもなっている事、この周辺に実は知られていない天然温泉が存在する事、自分は絶対に行きたいと思っている事などを説明します。これは「自己主張」です。するとここで、車が一台しかない問題が発覚します。この時に「前向きな解決策」を編み出す必要が出てきます。もしここで、「スキーなんて危ないから温泉が絶対に良い」とか「自分は絶対に温泉にいく為に車を独り占めする」「みんな温泉に変更して欲しい」と自分だけの欲を優先して聞く耳を持とうとせずに皆を困らせるのは「自己中心的」です。せっかくの集団での旅行が台無しです。こういう人をまた旅行に誘いたいと思うでしょうか。③遠回りになるけど自分が運転しスキー組をスキー場で降ろしその後温泉に向かう事でもできますし、④朝という時間帯を変更すれば、スキーの後夕方から温泉希望者と一緒に行くと仲間と一緒に楽しめそうですよね。最初の2択だけだった選択肢から③「1台の車を上手に活用する」、④「時間帯を変えることで複数人と温泉を楽しむ」という新しい2つの選択肢がディスカッションを経て増えました。会話の最初には存在しなかった選択肢です。さらに、スキーが苦手な自分は⑤朝からスキー場には行くけど滑らずに雪のアート展に参加したり、皆の笑顔を得意の写真で收めると良いでしょう。スキー組も温泉組も、スキーと温泉という単体の選択肢から幅が広がりさらに楽しめそうです。これがディスカッションであり会話です。皆がもつ様々な意見を融合し最高のアイディアを生み出す楽しい瞬間です。

しかし、もしここで「自己主張」と「自己中心的」の概念を正確に認識していないが故に、本音を押し殺し楽しくなさそうに皆と行動しても、周囲が気を遣います。本音で楽しんでいる人と本音でない人は見れば分かります。勇気をもって自分が違うと思うなら「NO」を言ってみましょう。意外に自分が思っていた以上になんともない事が多いです。ただ忘れてはならないのは、建設的に、前向きに、最良の答えを出すのが目的、という姿勢です。

単に職業の違いや年齢の違いを受け入れる

それでもなお、我々特有の非常に、非常に、自分の意見を言いにくい時があります。それは年齢が自分よりも上の人や、社会的地位が自分より高い人と会話をする時です。アジア文化の特徴に私達は「年上の方」を労るという美しい文化があります。かといって、自分を押し殺し続けてまでも誰かを優先し続けるのは楽しくありません。「今回はあなたの希望を通すけど、次回は私の希望を優先してね!」と自分の希望をいったん延期する手段ともまた異なります。学校教育では「玩具での遊びは、みんな平等の機会を」と平和維持の礼儀を習ったはずですがなぜか社会に出ると途端に年齢差を強調されるので戸惑います。   

SVJUでの日本人留学生への講義の中で、「社会人とは?」というサブテーマも与えられました。そこで私は「社会人とは対等に会話が出来る人」と答えました。「海外でもやっていくコツは?」の問いに、「誰を相手にしても対等であり続ける事」と意見しました。自国を出て海外で一旗揚げてやろうと意気込んでいる人達の自己主張は時に力強すぎるくらいで、特に人口の多いインドや中国出身の方々の迫力にはとてつもないハングリー精神を感じます。自分の意見が通らないからといって怒ったり、相手の意見を無視したりするのはけんかや戦いになってしまいます。前回のコラムでの“やんわり英語”を使っても良いですし、超・論理的に攻めてもいいです。平和主義として「今回はあなたの意見を通すけど次回は私の意見を優先してね」と約束しても良いです。約束を破ったときのペナルティも決めておいても良いです。英語でも何語でも、「NO!!」と突きはねられたら人間誰でも傷つくもんです。やんわりと、「あなたの考えは良いけど、自分はこうしたい」とやんわり反対意見を言ってみるや、反論の余地がないくらい圧倒的な論理力で話の筋を通す練習も必要です。忘れてはならないのはあくまで相手を否定して抑圧するのではなく、建設的な解決策を導く為に相手の意見を尊重する姿勢と、冷静な会話です。
またこんな見解もあります。自己評価Self-esteemが低い人は自己主張や建設的な会話が難しいようです。職場でも家族・友人同士でも何か間違った事や相手を傷つけてしまった時に、

あなたは素直に「ごめんなさい」が言えますか?

ブレネー・ブラウンBrene Brownはアメリカで人気の社会学者です。「恥」について多くの興味深い研究をされています。謝罪が出来る人と、出来ない人で決定的な違いがある事を研究から導き出しています。それは「自己評価Self-esteem」です。適切な時に謝罪が出来る人は正常な精神状態ですが、言えない人の多くは自己評価がとても低いそうです。いわば劣等感です。スライドの3枚目にあるように、I am sorry. I made a mistake. (ごめんなさい、間違えました。)とI am sorry. I am a mistake. (ごめんなさい、私自身が間違いです。)では決定的に違います。前者は、一時的に間違った事を素直に誤り既に気持ちは次に向かっていますが、後者はまるで自分が劣っていて存在価値がないと落ちています。いつ起き上がってくるのか見えません。これが「自己主張」とどう繋がるかと言うと、そもそも自分の価値さえも認めていない人が相手を尊重し、自分の意見に自身を持って発言出来るはずがありません。相手の意見を飲んだ場合はそれが本当に尊重した上で同意したのか、自分なんか反論する価値がないと相手の良いなりなのか、明確に分けなければなりません。

まとめ

今回は「自己主張」と「自己中心的」の違いをコラムにしてみました。要は素晴らしい日本文化、日本人、あなたのユニークな考えを異なる言語で伝えれば良いだけです。何も難しい事は要りません。結局同じ人間同士ですから。「尊重」さえ出来れば全く問題ないはずです。

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