腱障害tendinopathy ①

(1)Pure peri-tendinitis (2)Peri-tendinitis with tendinosis (3)Tendinosis 

本題の「腱障害とは?」を様々な角度から見ていきます。腱障害はTendinopathyと呼ばれます。本編では障害そのものが生じている部位別の名称に着目します。

アキレス腱断裂という病態が発見されたのは遙か昔1575年です。当時はそもそもMRIも超音波もないので手術中の所見や気づきから医学が発展していきました。手術中に断裂アキレス腱の一部から細胞を取り出し顕微鏡で調べてみると炎症をしめす炎症細胞が断裂腱に多数見られた事からミステリーは始まりました。例えば下腿後面に大きな一撃が入って受傷した外傷性アキレス腱断裂例では通常さほど多くの炎症細胞は見られなかったからです。炎症細胞を多く認めた患者達への問診から、断裂前に皆「痛み」があったけど我慢していた事が発覚しました。この事から炎症性腱障害(腱に炎症が起きている状態)は断裂に繋がる大きな要因かもしれないと医師達は口を揃えました。そして、この急性期の腱鞘炎や腱炎をtendinitisという言葉で表現しました。

しかし次ぎに別の病態が現れました。外傷性でないアキレス腱断裂の手術中に断裂腱から細胞を採取し調べると、炎症細胞がほとんど存在しない例や全く存在しない病態が発見されました。患者達にはこれといった外傷の契機もなく、先行する痛みは数週間も数ヶ月も前で最近は痛みに慣れて来たくらいだと言うのです。いつもと様子が違うので、アキレス腱を栄養するパラテノンという腱周囲の「膜の様な組織」の細胞も調べる事にしました。そして1976年にPudduというイタリアの医師が3種類に分類しました。

(1)アキレス腱は無事でも膜に炎症が生じている例がPure peri-tendinitis

(2)膜に炎症があって腱成分そのものには「退行性変化」が起きている状態Peri-tendinitis with tendinosis :膜は無事でも腱自体にすでに加齢性変化が始まっている例

(3)炎症の時期ではない腱障害、つまり慢性状態になっている腱障害:これをtendinosisと名付けました。そしてこの病態が最も多く断裂へ繋がる前兆なのでこの言葉にもっと重きを置こう、と提唱しました。足の外科学会の用語集では、「腱症」と訳されています。 *(2)と(3)の状態が断裂に繋がる危険があると報告しました。

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