腱外傷tendon injury = 腱断裂tendon tear + 腱障害tendinopathy

腱断裂tendon tear = 部分腱断裂partial tear + 完全腱断裂 rupture/complete tear

腱に生じた全ての問題を総称する用語はtendon injuryといい「腱外傷」と日本語に訳されています。「外傷」と日本語で聞くと交通事故か何かによる大きな怪我を想像しますが、実際にはその大怪我から「なんか調子悪い」というレベルまでの幅広い意味を持ちます。足が痛むというお子さんを学校体育の授業から休ませる時に、Tendon injuryが理由です、と学校の先生に言えば休めます。でもその子供は意外にも走り回っていたりもします。

医学用語の腱外傷は大きく2つに分類されます。じわじわと時間をかけて悪化する慢性の腱障害tendinopathyと外力などにより実際に「プチッと切れた音がした」というように腱実質成分の連続性が絶たれる腱断裂tendon tearです。腱断裂はその損傷の大きさで部分と完全に分けられ、完全断裂例には手術での縫合術が選択される事が現在では50%ほどの割合ではないでしょうか。やはり完全断裂というのは体にとって相当の衝撃があったという認識ですので、腱だけに留まらず腱周囲の軟部組織にも損傷がある事が多い事から私個人的な意見では治療法に手術を選びます。周囲軟部組織も顕微鏡などの併用で完全修復を目指したい所です。

アキレス腱断裂が生じた患者を伏臥位とし膝関節を90度屈曲させ、検査者の手を下腿後面にあて下腿部後面の筋肉を強く掴むと足関節が自然に底屈します。下腿部の筋肉がアキレス腱となって最終的に踵の骨に付着するから連続性が保たれているという証拠です。これをThompson's test と言い、医大生の試験で絶対出る!と言われる程馴染みの深い理学所見の1つです。このテストは1960年にその名の通りThompson先生により考案されましたが、当時は人間の体の中を詳細に見る手段は手術だけでした。完全断裂と思って手術をしたら実は「部分断裂」だったという例が報告されたのは1953年頃になります。

部分断裂例では、Thompson's testの結果が正常に出てしまう例と出ない例があるため、その鑑別に当時の医師達が苦労した事には間違いありません。現代ではMRIも超音波もありますので簡単に判別つきます。医学機器の進歩によっても病態把握がより深くなる為、次の「腱障害」ではまさに名称の混乱に翻弄されていきます。

出展 : 日本整形外科学会 「症状・病気をしらべる」「アキレス腱断裂」

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