PM&Rスポーツメディスン科ではもっぱら腱障害との戦い

欧米でこんなにもPM&R(Physical Medicine & Rehabilitation)が流行っているのには理由が2つあります。表向きはもちろん、手術をしないで治る選択肢があるのであれば患者にとってこんな嬉しい話はないです。しかし本来の目的は膨れあがった運動器に対する医療費浪費の抑制です。医療費負担に関する問題が深刻なアメリカ政府からはPM&R領域における医学研究への援助も手厚く行われています。これが海外で医学研究が実施しやすい労働環境にも繋がっているかもしれません。

表は2012年に実施されたアメリカ国内での運動器に関する健康調査の結果です。調査結果によると18歳以上のアメリカ人の約半分にあたる1億2660万人がなんらからの運動器障害を有している事が分かりました。なんらかの症状というは、「痛い」「腫れている」や「痺れる」もあり、また「四肢の動きにくさ」も含まれています。どこの国も皆さん、痛みや不自由を感じながら不器用に生きている現状ですよね。アメリカ国内における慢性の運動器障害への医療費はこの10年間で50%以上も増加しています。

素朴な疑問として、まずどこが痛いのか?です。例えば足が痛いと言っても「骨が痛い?」「靭帯や腱?」「筋肉が痛いのか?」です。詳しく調べるとスポーツ障害のうちの30%以上は「腱障害」 が占めていることが分かりました。毎年1640万人以上もの人が骨でも筋肉でもなく、障害を負った「腱」の治療の為に医療施設を訪れています。これが運動器に対する医療費を引き上げ続けている最大の理由でした。患者が医療機関を複数回受診し、いくつかの医療施設を転々とするのは、症状が改善されないからです。「お医者さん!ちゃんと治して下さい」と言わんばかりに患者はやむなく転々と受診をしているのです。

そこで、PM&Rは今まで不可能だと思われてきた腱障害への根治治療へ取り組み始めました。人は生きている限り運動器を使って生きています。どこも悪くない人なんていませんが痛みは別ものです。慢性痛は生活の質を大きく下げます。スポーツ人口と高齢者人口増加の両方の側面からも今後も患者数が増え続けると予想されています。このことは目を背けられない世界中の社会問題になっていきます。

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